小野海「FELT SENSE」

小野海

FELT SENSE

2024.11.12 - 2024.11.30
11:00 -19:00 (Closes at 17:00 on Saturdays)
*Closed on Sundays, Mondays & Public Holidays

ABOUT

ART FOR THOUGHTでは11月12日より30日まで、小野海「FELT SENSE」展を開催します。

滲み合う色彩とホッチキスで繋ぎ合わされたフェルトによる本作は、精神と身体の曖昧さや拡張性を感じさせ、言語化の困難な身体感覚(FELT SENSE)を立ち上げる新作シリーズとなっています。

私たちは、人間らしさをどのように知覚し編み直すことができるのでしょうか。ぜひご高覧ください。

CURATOR'S REVIEW

"怪物"はふたたび現れる。

小野海はこれまで、立体的に知覚の存在を立ち上げてきた。「Prism」シリーズでは不可視や知覚を彫刻的に構築し、かつそこに虹色の糸を張り巡らしていくことで、その知覚の多彩さや構築の無限性(鑑賞していると、私たちはモアレ現象のような作品の膨張を錯覚する)を、あるいはほつれや儚さを表現し、それらを総体的な"知覚”として現出してきた。

本展の「FELT SENSE」シリーズで小野は、「Prism」との共通点として“知覚を立ち上げる”ことを目指しながら、そこに複数性と拡張性の共在、そして血肉のうごめく身体性に迫ることを試みた。複数の色が滲んだフェルトと、それをぶっきらぼうに繋ぎ止めたホッチキス。ここに境界の曖昧さと拡張性が共在しており、現代に生きる私たちが複数の曖昧な分人(私たちはシーンに合わせて複数のキャラクターを使い分けながら、そこに疲弊や混同を感じている)を内包しながらも、IoB(Internet of Bodies)に象徴される身体拡張を試みていることを想起させる。

事実、「FELT SENSE」とは心理学の分野で”言語化の困難な身体感覚”を指しており、不可視の知覚を立ち上げてきた小野が、その関心の対象を知覚主体としての身体へとフォーカスしていることもうかがえる。

またホッチキスでフェルトが用いられている点は、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』に登場する"怪物”を連想させ、人の技術によって歪に形をつなぎ留められていること、そしてその内側に血肉が脈打っていることを想像させる(事実、本作は平面作品でありながら波打っており、フェルトの裏にある身体を想起させている)。

批評家・山本浩貴は著書『ポスト人新世の芸術』のなかで「未来にむけて新しい形の「野生」を彫琢していくことが私たちに求められているだろう。[p.81]」とし、世界の再魔術化の必要性を唱えている。私たちヒューマン・ビーイングにとって、器官としての知覚もさることながら、曖昧で不可視な知覚(FELT SENSE)に意識を向けることは、よりよく生きるために人間らしさを霧中で手繰り寄せる行為(野生)とも言えるのだろう。

先に挙げた『フランケンシュタイン』の中で、"怪物”はついに名前を授けられることなく人間らしさを勝ち得ることができなかった。果たして小野は、「FELT SENSE」という身体感覚を人間の知覚としてどのように立ち上げようとしているのか、あるいは、曖昧で言語化の困難な“怪物”としてそのアウラは人間らしさを勝ち得ないのか──。小説では、”怪物”の生死が明示されないまま、読者は最後のページを迎える。

キュレーション・田尾圭一郎

BIOGRAPHY

1995年 兵庫県生まれ

2020年 東京藝術大学美術学部彫刻専攻 卒業

2022年 東京藝術大学大学院彫刻専攻 修了

Selected Exhibitions & Appearances on Media

2022年 7月 「CORE Part8 」tagboat

2022年 8月 個展「Prism-Reimport」 コートヤードヒロオ

2022年 8月 グループ展「GALLERY SCENA Pre OPEN展」GALLERY SCENA

2022年 10月 グループ展「松阪カルチャーストリート」 三重県松阪市

2022 10月 グループ展「P.O.N.D2022」渋谷パルコ

2023年 2月  グループ展「CURVE」tagboat新ギャラリー柿落とし展

2023年3月 フジテレビ「Core」出演

2023年 6月 コレオグラフィーモンタージュ舞台「タイタス・アンドロニカス」舞台美術&出演

2023年10月 日テレ「Art house」出演

2023年 11月 個展「Tom Boy」tagboat

2023年12月  「SHIBUYA STYLE Vol.17」西武渋谷

2024年 7月 すいどーばた彫刻科スタッフ展「momentum」B-gallery

展覧会一覧ページへ