ABOUT
ART FOR THOUGHT(アートフォーソート)では菊地虹「SPECTRUM」展を開催します。
リアリズムと抽象的な要素や素材をそのまま活かした表現をすることで、"雑多"な集合としての風景表現を試みた作家が約4年間テーマとしてきたSPECTRUMシリーズの集大成です。
ぜひご高覧ください。
ARTIST STATEMENT
私の絵は、いわば「SPECTRUM」な絵画。
バラツキが交差し続ける世界、その瞬間の”観測”なのである。
私が通底とするテーマはSPECTRUMだ。辞書を引けば「連続体」「範囲」の意があり、スラングでは「雑多」「多種多様」のニュアンスで使われるワードだ。この語に惹かれた理由は定かではない。しかし、私の作風が常に変遷を繰り返すことも関連するのであろう。
油絵具を初めて触った。
その瞬間から、塗り重ねるほどに深みが増すような不思議で濃厚な表現に憧れた。
しばらくは西洋の近代画家、例えばセザンヌ、ゴッホ、コロー、ルノワール、ピカソ、クレー、またそれらを受容した日本人に影響を受けた。海外へ行った後は現代アート、東洋的な表現、ミクストメディアにも関心を抱いたし、抽象画、イラスト、漫画のような絵も描いた。しかし最近は近代絵画的作風に回帰した。
そう、私の作風は常にバラついている。終わりのない表現の探究が駆り立てるのだ。しかしその対価として、何に対しても中途な態度を余儀なくさせられている。
一見両立しないものをボーダーレスに捉える”癖”があるとも言えるだろう。日本的と西洋的、近代と現代、純粋と不純、抽象と具象、ポップカルチャーとハイカルチャー。そのどれでもあり、そのどれでもない。
無限の探求とボーダーレス。
そこから描かれた作品は、バラツキが交差し続ける世界、その瞬間の”観測”なのである。
今まではそれを「SPECTRUM」と呼ぶほかに、手立てがなかった。
しかし、これからは、また新しいテーマを掲げて気持ちを新たに制作に励みたい。
そこで、「SPECTRUM」シリーズには一度、終止符を打ちたいと思う。
今回の展示では、このシリーズの集大成として様々なアプローチの作品群が並ぶ。
これまでに描いてきた代表的なモチーフを、これまでに用いてきた技法を駆使して表現した。
そして少しばかり、新たな表現の兆しを含めてみた。
この展示で約4年間にわたって展開した「SPECTRUM」の到達点を呈示したい。