ABOUT
ART FOR THOUGHTでは2025年1月10日より18日まで、吉浦眞琴「口先の指差し眼差しの先」展を開催します。
ドライポイントを用いたやわらかな輪郭表現と、幻想的な色彩やモチーフで、ナラティブのにじむ版画作品を制作する吉浦。
関西で活動してきた彼女の、東京での初めての個展をぜひご高覧ください。
ARTIST'S STATEMENT
私は、透明化された存在に対して、銅版画のドライポイントという手法で向き合っている。
その存在は、どこかで忘れ去られ、無視され、見えないものとして、ただひっそりと存在している。だが、私はそのようなものたちの中に、何かしらの意味を見いださずにはいられない。
銅版画のドライポイントで、ただひたすらにその痕跡を掘り起こしているのだ。ものたちは、確かにそこにあるのに、誰も触れようとしない。無視されて、見えなくされて、存在が薄れていく。それに対して、私はただ黙って向き合う。それがどれだけ無意味で無駄に思えても、無理にでも声を聞きたくなる。
ものは語らない、だからこそ私はそれらに何かを託す。言葉にならない思いを、手のひらを通して伝えるように、ドライポイントの鋭い線でその存在に肉を与えていく。その無言の沈黙が、時に言葉よりも強く、心に突き刺さることがある。何も言わず、ただ存在しているその姿に、私は少しでも触れたいと思うのだ。
私の制作は、そうした無意識の積み重ねでできている。たとえ誰にも理解されなくても、その無言の叫びに私は耳を傾け版に刻みつける。